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南伊豆の農家さんがファンになった”はちみつ” 高橋養蜂

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下田新聞編集部のある道の駅2階には”まるごと下田館”というお土産屋さんがある。

定番の金目鯛せんべいや、地物の乾燥海苔、地元デザイナーのTシャツや雑貨類、以前記事で紹介した山田鰹節店の商品などなど下田でしか手に入らない商品が販売されている。

約500点ほどある商品群に、今から約一ヶ月前の7月4日に新たに加わった商品がある、
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高橋養蜂のはちみつ。

取り扱い開始から毎日売れ続けている人気急上昇中商品だ。

販売スタッフに聞いたところ、売れている理由はズバリ
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見た目が可愛いから。

いわゆるジャケ買いだ。

優しいタッチで描かれた花や果実のみつを吸う蜂のイラストが女性客に評判が高く、自分用とお土産用に複数購入されているそうだ。

このイラストは、いつか自分で作りたい”蜂の楽園”を生産者の高橋さんが油絵で描いたもの。

蜂への思いが商品力となっている。

高橋さんは今から10年前、ミツバチが世界の食物にとって大事な役割を担う存在であることをテレビや本を通じて知り、養蜂に興味をもったという。

ミツバチの話になると、およそ朝まで止まらないのではないかと思うほど蜂への愛がある方。

そう、言うなれば高橋養蜂ではおさまらない、

高橋愛蜂

という屋号がしっくりくるような
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高橋さん。

ご存知の方も多いと思うが、はちみつは蜜源植物の違いにより味が異なる。

高橋さんのはちみつ商品も
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蜜源となる花やフルーツごとに分けられている。

下田新聞
高橋さんのミツバチたちは、どんな蜜を集めてくるんですか?

高橋さん
春は山桜と藤の花、そこに菜の花も入ります。
この辺(稲梓)の山桜は咲き乱れると真っ白になって、その時に蜜がすんごい溜まって美味しいのが取れるんです。
で、5月になると巣箱をみかん農園に持って行きます。
みかんの花って2週間くらいしか咲かないんですけど、下田はみかんに恵まれているので最初の2週間は温州みかん、そのあとニューサマーオレンジと甘夏の花が咲いてくれるので1ヶ月まるまるみかんの蜜が取れるんです。
みかんの蜜って割と薄くなっちゃうんですけど、下田のみかんは良い、美味しい、ちょっと他のみかんの蜜とは違う濃厚さがあります。

下田新聞
素朴な質問ですが、巣箱を移すってことは山桜とみかんの蜜が多少は混じる感じですか?

高橋さん
ほとんど混ざってないです。
移す前に全部採って掃除、一回空にします。

下田新聞
なるほど、混じりっ気ない蜜が採れるんですね。
みかん農園においた巣箱にはみかん系だけの蜜がたまる感じですか?

高橋さん
みかんの割合が多いのは確かですが、その期間の野山の花も多少は入っています。自然の花々です。
みかんにも裏年と表年があるみたいで、蜜がすごい採れた次の年は出なかったり、その年の雨量でも蜜の中身は変わります。
たしか7年前の5月、台風が来た時にはみかんの花が全部散っちゃってなんにも蜜が採れなかったです。
みかんの花は上に向いて咲いてるので、雨が降っちゃうと花びらに水が溜まってぽろっと落っこっちゃう。
しかも雨の日は蜂が外に出られず巣箱に溜めてある蜜で育児したりご飯食べるんで、蜜の量も少なくなります。
今年は雨が少なかったからすごくいい出来栄えになりました。

下田新聞
じゃあ、同じ場所で採られた”高橋養蜂のハチミツ”と言っても毎年味が変わるんですね。

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高橋さん
はい、そこがやっぱり本物のはちみつの良さです。
本物っていうのはなんにも混ぜない、その年に野山ですごい花が咲けば変わりますし。
みかんの花って養蜂場に行くだけで毎年すごい香るんですけど、その年によって糖度も違うし、やっぱ自然の食べ物なんですよね。

下田新聞
じゃあ高橋さんも採って食べてみて初めて「こういう味になったんだ」って感じですか?

高橋さん
はい、もうその時期その時期で。
今年(2017年)は熟成して糖度の高い蜜になりました。
雨が降らないと糖度は高くなるし、雨が多かったら多少薄くなっちゃう。

下田新聞
みかんの後、梅雨時期は蜂が外に出られなくて辛いですね。

高橋さん
梅雨時期に蜜を絞っちゃうと蜂が死んじゃうんで、そのままにしておきます。
その後8月くらいにカラスザンショウ(ミカン科サンショウ属)っていう夏のすごい蜜源の花が咲きます。
スパイシーな香りがするハチミツが採れて、うちではナッツのハチミツ漬けにいつも使ってます。

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下田新聞
スパイシーなハニー、響きからして旨そうですね!

高橋さん
コクがあって美味しいからってパン屋さんが使ってくれたりしています。
いろいろ人の好みがあって面白いです。みかんが美味しいって言ってくれたりさくらんぼが美味しいって言ってくれる人もいたり。

下田新聞
その時の自然の状態で味が変わる、ハチミツはその土地の季節の味でもありますね。
このパッケージのイラストにあるような蜂の楽園、下田に作ることができそうですか?

高橋さん
はい。
自宅近くの山にすごい広いみかん農家があって、そこを借りる事ができました。
そこにレモン植えたり果樹園にして、蜜源植物をいっぱいにしてミツバチの喜ぶ環境を作りたいです。
養蜂家ってのは、はちみつを作るんじゃなくて蜂を育てるのが仕事です。
はちみつは蜂が作ってくれる。自分達は何もしてない、とにかくいい蜂を。

下田新聞
ミツバチ愛がハンパないですね。

高橋さん
自分にとってミツバチは商売と言うよりペットみたいに思ってます。

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そんな高橋さんの愛に応えるように、ミツバチたちも年々いい仕事をするようになってきているそう。

ミツバチの巣箱は1つ1つの単位を群(ぐん)と呼び、1群あたり1万〜7万匹とバラツキが出てくる。

ミツバチの数が多い巣箱は強い群と呼ばれ、蜜を採ってくる量も多く、病気にも強く、密の糖度、味まで違うとのこと。

こうした強い群に恵まれないと得られない極上のハチミツ商品がある、
コムハニー

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巣蜜(コムハニー)

現在店頭で購入することはできないが、今後は検討中だそう。

購入できないものを食レポするのはタブーとは思いつつも、

甘く濃厚で雑味の無い味わい、品高き香りの余韻が幸せな気分にさせてくれる

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巣箱の中でハチミツが熟成し、糖度が80以上になるとミツバチが分泌液(蜜ろう)で巣房に蓋をすることで生まれるもの。

蓋の中のハチミツは糖度、栄養素、抗菌作用が高く、最高のハチミツと称され、

酸素も通さないため、とあるお墓から発見された巣蜜は

2000年前のもので、食べられる状態だったという。

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純粋で本物、下田の豊かなフルーツや花々が蜜源となった高橋養蜂のハチミツファンは地元にも多い。

ホテルの朝食や、スペイン料理店、カフェなどのメニューにハチミツが愛用されている。

そんな地元ファンの中には、農家さんもいる。

実は、高橋さんへ取材をさせてもらった時、前半ほとんどの話題がこの農家さん

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中村大軌さんの話だった。

中村さんは南伊豆や下田の休耕田を再生し、景観と環境を守りながら米作りを行っている株式会社アグリビジネスリーディングの代表。

農薬低減や微生物を活かした土作りに取り組んでおり、今では伊豆地域で最大規模の耕作面積を誇る稲作農家だ。

その中村さんが言った印象的な言葉が、

「農薬をまく時は高橋君の顔が浮かぶ」

中村さん
農業を始めた頃、当たり前のように農薬を撒く自分がいました。そういうものだと。
それでザリガニとかいろんな虫が死んでるのを見たりしているうちに、撒いてる自分も気分が良くないし、どうにか抑えられたらいいなってずっと思ってました。
農薬を撒かずに作物が作れるんだったらその方がいい、そうした価値の分かってくれる人に買ってもらいたい、そう思い独立し有機農法に挑戦しました。

下田新聞
実際、有機農法ってすごく大変ですよね。
採算も合わないし、リスクも大きいし。

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中村さん
はい、頭でっかちに有機・無農薬一本ではバランスが悪く続けられません。
田んぼによって癖が違うので、うちではいろいろな作り方してます。
農薬も肥料も使うけど減農薬にしたり、化成肥料と有機肥料を使ったり、化成肥料は使わないけど農薬は使ったり、そして何にも使わなかったり、あらゆる農法を。
ただ根本の考え方として大きく異なるのは、化成肥料に頼るのか、土の中の微生物に頼るのかというところだと思います。
微生物は肥料を作ってくれます。
強い農薬を撒き続けると微生物がいなくなり土が痩せ衰える、そうなると化成肥料に頼るしかなくなる。どちらを選ぶか。

下田新聞
農薬は虫だけでなく、微生物も全部殺してしまうんですね。
ネオニコチノイドという農薬がミツバチを殺してしまうといった問題も一時期メディアで話題になりました。
中村さんの稲作エリアは高橋養蜂のミツバチ活動エリアからは離れていますが「農薬をまく時は高橋君の顔が浮かぶ」のはどうしてでしょうか?

中村さん
農薬はミツバチに悪影響を及ぼします、それは高橋君の土地周辺だけの問題じゃなく巡り巡ってこの地球に与える悪影響だと思うんです。
ミツバチは公益的機能というか、蜜を採取するだけじゃなく果実を実らせるための受粉の役割があるので地域全体の問題なんですよね。

下田新聞
そうですね、ハチは地球上の作物の3分の1を受粉していると言われています。
大局で考え、小さい動きをみんなが始めなければならない問題ですね。

中村さん
米もそう。
いい米を作る為には農薬に頼ってたらいけない、そんな農家が増えていけばこの地域の土地が良くなり自分も良くなるわけだから。
ただ農薬や化成肥料が絶対悪だっていう頭ごなしにじゃなく、これをすると地球がこうなる、だったらこれはあんまり使わない方がいい、っていう。
やっぱりお互い影響してるわけですよね、影響し合ってるから蜂はありがたい存在、こっちもそうでありたいなって。

下田新聞
高橋さんがご家族の病気で辛い時、中村さんがすぐ助けに来てくれたと聞きました。
すぐに駆けつけて助けてくれる仲間がいるってすごいなと、何がそうさせるんですか?

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中村さん
あー、なんですかね、やっぱり自分事だと思うのかもしれない。
やってあげてるって思いは全くなく、素直にやった事が返ってきてるので。
だから自分の為なんです。
高橋養蜂が良くなればうちの田んぼも良くなるようなイメージ、そこが直結しているような関係だと思います。
あと高橋君のミツバチに対して純粋すぎるところが好きです。
人間じゃないんじゃないかと思います(笑)。

下田新聞
やはり、そう思いますか(笑)

中村さん
ミツバチが好きだからしょうがないっていうか、頭で考えてないところ。
自分がどうしたらいいのかっていうのを「蜂が言ってるから」ってことで動かされているんです。
そういうところが共感できます。
けど、とにかく身体を壊さないで欲しいなって。

下田新聞
身体が資本ですもんね、特に農家さんは。

中村さん
ほんとそうです。
持続可能ってことを考えるとやっぱ自分の精神と身体だと思うんうすよ。
すごいヤル気があっても、手足動かなかったらもどかしいじゃないですか。
そこのバランスをとれるようにしたいなって自分で思ってて、だから頑張らないんすよ、俺は。
ある程度は分散して助けてもらわないと続きません。
俺もいろんな人に助けてもらってます。
農家の人って結構身体を壊したりするんですよ。
やっぱ長く続けるには心と身体のバランスが大事。

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高橋さんは取材中こう話した、

「自分のことよりも、いつも助けてくれる中村大軌君やクレソン農家の平山さんのことをみんなに知ってもらいたい」

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左から中村さん、肩のあたりに写っているのが平山さん、一番右が高橋さん。

クレソン農家の平山さんにも、いつか改めて取材を申し込みお話を聞かせていただきたい。

最後に高橋さんが本当の夢を語ってくれた。

「自分もブルーベリー作ってるから分かるんですけど、農業って農薬使わないと死活問題になっちゃうんです。
だからミツバチの大事さを養蜂家が唱え続けても難しい。
でも中村大軌君みたいな農家の方や買ってくれる人が増えてきて、日本の技術力ある農薬会社の人達が蜂には良くて害虫に効く農薬を開発してくれる、これが本当に自分の夢です。」

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取材先:高橋養蜂
WEB: http://takahashihoney.net/

取材先:株式会社アグリビジネスリーディング(南伊豆米店)
WEB: http://minamiizu-kometen.jp/

取扱店舗:※下田市内

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