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まちの板さんに怒られてきた歴史ある店、だから旨い 山田鰹節店

案内されたところ本当に良かった、ありがとう

こんな言葉が下田市観光協会は大好物。

褒められて伸びるだけでなく、求められて伸びるタイプが観光協会だと思います。

つまりお客様の具体的なニーズが会話の中にあればあるほど、脳内データベースの検索精度が上がり、満足度の高い案内ができる。

今回オススメするのは、下田のお土産スポット。
良質なものを買って帰りたいと言うお客様におすすめ。

案内されたところ本当に良かった、ありがとうスポットの一つでもあり、
お客様の具体的なニーズを日々スパルタ教育で叩き込まれた結果、
大きな信用を得て高い品質を守り続けられているお店です。

伊豆急下田駅から徒歩約9分、三丁目通りに入ると見えてくる
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縦書きの看板、このぐらいの距離に近づくとあることに気づく。

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鰹節の香りに包まれる三丁目の空気。

家族経営で創業80年以上、高級旅館やホテル、飲食店からご家庭まで下田の出汁を支えてきたと言っても過言ではない、
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山田鰹節店

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決して広くはない店内には鰹節を筆頭に、昆布や海苔、出汁パックなどの商品が所狭しと並べられており、とりわけすぐに目を引くのが、

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Always三丁目の香りを醸し出している、削りたての”かつお節”や”さば節”。

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昔ながらの量り売りで購入できるため、お試し用、お土産用にも使いやすい。

香ばしい匂いにつられて観光客だけでなく野良猫もやってきてしまうのではと思いお店の方に聞いてみると、

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「日々猫との戦いですよ(笑)」

と二代目店主の山田さん(右)と、甥の高橋さん(左)。

このお二人が作る鰹節に多くのファンがいることを観光協会や街なかでよく耳にする。

”作る”と言っても、こちらのお店でカツオを煮たり焙乾させたりしているわけではない。

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お店が望む品質や味わいを、信頼できる外注先が特注品として作り上げ山田鰹節店に荒節として納品している。

そうして山田鰹節店のために選りすぐられた荒節を、お店で一度蒸して乾燥させ、

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鳥羽式鰹節削り機で削る。
この機械は、職人の高度な削り技術と頻繁なメンテナンスを要する削り機の名器だ。

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真っ黒い荒節が、

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あっという間に、綺麗な花に。

こうした職人が一つ一つ目と鼻で確認しながら削る工程を店頭で眺められるのもこのお店の特徴だ。

希望すれば、この削りたての鰹節や鯖節を一つまみ食べさせてもらえる。

食べさせてもらった時に出た一言は、

「米が、米が欲しい」

実際、うちに帰ってから炊きたての白米に「かつお薄削り」をたっぷりふりかけ、踊る鰹節にすりたて本わさびと醤油を垂らした”わさび丼”を食してみたところ、あまりに美味すぎて3杯お代わりしてしまった。

究極のわさび丼は、鰹節こそ全て

そう感じた。

白米は南伊豆町の愛国米、わさびは河津わさび、鰹節は下田、これが究極の組み合わせだろう。

仕入れている荒節は下田市内もしくは西伊豆田子あたりのものだろうか、

製造元はどちらかを聞いてみたところ、

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「焼津です。」

下田新聞
おっと、少し意外でした。
日本を代表するかつお節の名産地焼津ですか。

山田さん
昔は田子節も使っていたんですよ。けれど、水揚げ量の問題などで自分たちの求める味とは合わなくなったんです。

下田新聞
それで、他の製造元を探したところ焼津に行き着いたと?

山田さん
ここなら自分たちの味を作ってくれるという店が焼津に見つかりました。そこは私たちみたいに家族だけでもう150年位続いているので、新参者の私たちが荒節を作って欲しいとお願いしても、手一杯だからということで最初は断られました。

高橋さん
無理ですよって何度も。けれどそうこうしているうちに製造元の取引先がちょうど一つ無くなったので、うちが入り込めました。

下田新聞
自分たちの求める味っておっしゃいましたが、製造元が同じでも納品される荒節は納品先別に異なるってことですか?

山田さん
そうそう。鰹が一匹一匹違うように、荒節も全く同じではないです。良いもの悪いものもあるんですよ。

下田新聞
どういう荒節を作ってくれ、という注文をするわけですね?

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山田さん
そうです、全部注文をつけます。今回のは粉っぽいとか、脂が多すぎるとかうちの好みをどんどん言っていっていきます。
さっぱりと香りよくっていうのが、うちが昔から守ってきた味なので、焼津の製造元もそうしたものを選んでくれるんです。
でも、いつもはそこの社長が選んでくれるんだけど、社長じゃない人が選ぶとイマイチなものが中に混じってきたこともありました。

下田新聞
社長の目利き、すごいですね。

高橋さん
本当そうなんですよ。信用の世界です。だから
「ちょっと今回ダメだったよ、どういうこと?!」
ってクレーム入れると、
「あーすいません、社長が選ばなかったんで」
ってことも。

山田さん
鰹自体がどれも一緒じゃないんで製造元的にも今回どうかなって商品はあるんだと思うんですよ。
そういうのがうちに納品された時、「いつもと違いませんか?」とすぐクレームをつけるわけですよ。
そうすると、製造元の社長から「あーそうですよね」って、山田さんわかってますねっていうやりとりが何回かありました。
「大阪の高級料亭と山田鰹節店さんの2軒から同じ反応がありました」って言われたり。
今は製造元もうちに対しては気を遣ってくれるようになっているので、質の良いものが届くようになっています。

下田新聞
なるほど、ということは焼津で生産された鰹節とはいえ、この味このクオリティの鰹節はここでしか手に入らないということになりますね。
山田鰹節店らしい味を守り続けていくことも大変ですね。

山田さん
下田の板前さんに育てられてきたとも言えます。

下田新聞
どういうことですか?

山田さん
下田が一大観光地として栄えた頃、このまちの旅館やホテルに一流の板前さんがたくさんやってきたんです。当時の板前さんは職人気質ですごく厳しかった。

”出汁も出ない、香りもない!俺のとった出汁を見てみろ!”

って言われてすぐに呼び出されるんです。こっちも良いもの提供しているプライドがあるからおかしいと思いつつ行くんですよ、そうするとちょっと納得できたり。

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「朝一からいっぱい怒られました。俺、板さんのところ行くたびに(笑)」

山田さん
その辺から、私たち家族も出汁や料理をもっと勉強するようになりました。
板前さんのところに料理の手伝いしに行ったり。

下田新聞
現場に入れば、どう鰹節が使われているか分かるわけですね。

山田さん
そうそう。
ちなみに出汁だけじゃなくきんぴらの笹がきとか色々やらされるんですけどね。
そうやって「こいつはできるな、真面目だな」って信頼が生まれると一流の板前さんが直々に出汁について教えてくれるようになったんです。

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妥協を許さず自分たちの味を製造元と作り上げる信頼関係と、厳しい一流の板さんから認められた舌、目利き。

今でも、出汁の研究は日々続いているという。

例えば、ということで試食させてもらったものが、

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かつお節出汁のみで作っためんつゆ。
※非売品

昆布すら入っていないため味わいはすっきり、だが香りがはっきりしていて旨い。

ほうれん草を浸せば、上品な一品が完成する。

他にも、
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出汁醤油。
※非売品

かつおの厚削りをみりんと醤油に漬け込んだだけのシンプルなレシピだが、まろやかで旨味が程よい。

マグロの漬けから卵かけ御飯まで万能に使えそうな調味料だ。

お店に行けば、レシピを教えてもらえます。

話を聞きながら、このお店に並んだものなら信頼が置ける、任せられると感じた。

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このお店のファンは地元家庭や飲食店、観光客だけではないという。

東京の料亭や、フランスの和食レストランのオーナーなど、山田鰹節店の鰹節を仕入れているお店も多いそうだ。

一流の料理を作る方々にとって、上質な鰹節をブレずに提供し続けてくれる鰹節店は貴重なことだろう。

一方で、小さい頃からこの店の鰹節・出汁で育ち、世界的な評価を受ける料理人になった方もいる。

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栗原はるみさん。

はるみさんは下田生まれ、山田鰹節店とはご近所さん。

子供時代、お使いでこのお店に鰹節をよく買いに来ていたそう。

自分の好きな味、懐かしい味の原点がこのお店にあるのだろう、料理研究家になってからも山田鰹節店を頻繁に利用しているそうだ。

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はるみさんは、第10回グルマン世界料理本賞、大賞グランプリ及びアジア料理部門グランプリを受賞するなど日本だけでなく世界でも評価される料理研究家。

調理技術やオリジナルレシピ考案力、盛り付けや食器選びセンス、料理に対する考え方・伝え方など彼女が持つ多くの魅力の一つに、良質で美味しい出汁を子供の頃から味わってきた食体験もあるのではないかと思う。

実際に、山田鰹節店で試食をして「これ美味しい!」と言うお客さんには小さな子供も多いという。

山田さん
「ちっちゃければちっちゃいほど舌が慣れていないから、味覚が鋭いですよ。美味しいものは美味しい、まずいものは絶対食べない。子供ほど味が分かりますから。」

まちに鰹節屋さんがあることで、良質な出汁を通して地元民の味覚が育つ、そんな食育が行われていると考えられないだろうか。

そんな考えに通ずるエピソードが下田市内の給食センターにあった。

下田では、約4年前から市内小中学校の給食の出汁として、山田鰹節店の鯖節・いわし節を採用しているそうだ。

”おひたし”などメニューによっては鰹節も使っていると言う。

「良質な出汁を使うことで香りと旨味がしっかりするので、減塩にもなるんです。」

と語ってくれたのは、下田市内の小中学校全12校の給食メニューを考案している下田市立学校給食センターの栄養教諭、

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稲葉さん。
栄養バランスと安全性を考慮しつつ、子供たちに美味しいと喜んでもらえる献立を日々作っている。

取材した日の献立は、
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麦入りご飯、かき玉汁、炒り鶏、野菜の胡麻和え、牛乳

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こちらのかき玉汁は、山田鰹節店から仕入れた鯖節といわし節で出汁をとり、醤油、酒、塩で味を整えた優しく旨味の効いた一品。

和食の味、地元の味に慣れ親しんでもらいたいという思いから週3日は和食の献立を、その中で味噌汁など良質な出汁を使ったものを提供するように心がけているという。

稲葉さん
「山田鰹節店の商品を使用することで香りが伝わる給食ができ、旨味のわかる舌が育ってくれたら嬉しいです。」

店主の山田さんは、
「地元の子供たちのためだから、よそじゃ考えられないくらい安く抑えて納品しています。
納品しはじめた頃、給食センターの方から”子供たちが給食を残さないようになりました”と聞いて嬉しかったです。」
と語っていた。

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山田鰹節店店主の山田さんは、観光客に愛想を振りまくタイプではない。

地元のプロを相手に商売をされてきたお店であり、観光お土産店のような作りでもない。

しかし、どんなお客さん相手にでも出汁についてとても丁寧に教えてくれるし、聞けば何でも答えてくれる。

ぜひ、こうした地元密着のお店ならではの会話も楽しんでもらいたい。

このお店のファンは、商品に対してひたむきな店の姿勢を信用しているのだと気づくはずだ。

「案内されたところ本当に良かった、ありがとう」

と言われるスポットの一つ山田鰹節店を今回ご紹介しました。

厳しい一流の板さんに鍛えられ、商品力の高さを守り続けてきたお店。

焼津産だけど焼津じゃ買えない、この店だけのオリジナル。

そしてここの商品を下田市内全ての子供が味わっている。

栗原はるみさんのような料理人が、ここ下田からまた誕生する日も近いかもしれない。

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取材先:山田鰹節店
住所:下田市二丁目2-15
営業時間:7:30~20:00  (4月~11月)
定休日:毎週水曜日 (8月、12月は無休)
TEL:0558-22-0058
WEB: http://www.y-katsuobushi.sakura.ne.jp/
駐車場:提携駐車場あり(中央商店街駐車場) 
※会計¥2,000以上で駐車券進呈
座席:無し 
アクセス:下田駅より徒歩約9分

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